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大阪地方裁判所 昭和61年(ワ)9946号 判決 1988年2月26日

原告 甲野花子

右訴訟代理人弁護士 村本武志

同 国本敏子

被告 三青商事株式会社

右代表者代表取締役 平田稔

<ほか一名>

右両名訴訟代理人弁護士 中村勝治

主文

一  被告らは、各自、原告に対し、金三二一万四四〇〇円及びこれに対する被告三青商事株式会社については昭和六一年一一月一八日から、被告平田稔については同年一二月一七日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主文第一、二項同旨

2  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告三青商事株式会社(以下「被告会社」という。)は、不動産の売買等を業とする株式会社であり、被告平田稔(以下「被告平田」という。)は、被告会社の代表取締役である。

2  原告は、被告会社との間で、原告が被告会社から別紙売買契約目録(一)ないし(五)記載の各土地(以下「土地(一)ないし(五)」といい、一括して「本件各土地」という。)を買受ける旨の売買契約をしたが、その経過は次のとおりである。

(一) 原告は、昭和五九年八月下旬ころ、原告宅に来た被告会社従業員新地正信(以下「新地」という。)及び磯山弘(以下「磯山」という。)から土地(一)を購入するよう勧誘を受けた結果、同日、被告会社との間で、原告が被告会社から土地(一)を代金六〇万円で買受ける旨の売買契約を締結し、被告会社に対し、同日、内金一二万六〇〇〇円、同年九月二日、残金四七万四〇〇〇円、合計六〇万円を支払った。

(二) 原告は、昭和六〇年八月二一日、被告会社従業員上田豪三(以下「上田」という。)の訪問を受け、土地(二)を購入するよう勧誘された結果、同日、被告会社との間で、原告が被告会社から土地(二)を代金六二万五〇〇〇円で買受ける旨の売買契約を締結し、被告会社に対し、同日、内金一二万五〇〇〇円、同月二二日、内金二三万円、同月二九日、残金三〇万円、合計六五万五〇〇〇円(内三万円は登記費用として)を支払った。

(三) 原告は、同年一一月四日、原告宅に来た被告会社従業員から土地(三)を購入するよう勧誘された結果、同日、被告会社との間で、原告が被告会社から土地(三)を代金四五万円で買受ける旨の売買契約を締結し、被告会社に対し、同月五日、内金二四万円、同月八日、内金六万円、同年一二月一六日、内金九万九四〇〇円、合計三九万九四〇〇円(内五万円は登記費用として)を支払った。

(四) 原告は、昭和六一年一月一六日、磯山の訪問を受け、土地(四)を購入するよう勧誘された結果、同日、被告会社との間で、原告が被告会社から土地(四)を代金四〇万円で買受ける旨の売買契約を締結し、被告会社に対し、同月二一日、内金一一万円、同月三〇日、残金三一万円、合計四二万円(内二万円は登記費用として)を支払った。

(五) 原告は、同年六月六日、原告宅に来た新地から土地(五)を購入するよう勧誘された結果、同日、原告が被告会社から土地(五)を代金六〇万円で買受ける旨の売買契約を締結し、被告会社に対し、同日、内金五〇〇〇円、同年七月一〇日、残金五九万五〇〇〇円、合計六〇万円を支払った。

3  被告会社が、原告に対し、本件各土地の購入を勧誘し、売買契約を締結させ、売買代金名下に、原告から金員を交付させて、これを領得した一連の行為は、次のとおり原告に対する不法行為にあたる。

(一) 被告会社は、本件各土地が、いずれも地目は原野であり、交通の便が著しく劣悪な、宅地あるいは工業用地としての適地性のない土地であり、著しく低価値であるにもかかわらず、原告に対し、本件各土地がむつ小川原石油備蓄計画用地あるいはその周辺に位置し、将来、確実に値上りする有望な土地であり、右値上り益は銀行の預金金利に比べて著しく有利である旨の虚偽ないし誇大な説明をし、原告にその旨誤信させて、本件各土地の売買契約を締結させた。

(二) 被告会社は、真実は本件各土地を買戻す意思も能力もないのに、原告に対し、将来必ず値上り価格で買戻すと称し、原告にその旨誤信させて、本件各土地の売買契約を締結させた。

(三) 被告会社は、原告に対し、真実はそうではないのに、本件各土地の購入が、原告が同社から従前購入した土地を転売する際の転売利益に課税される税金対策に有利であると称し、原告にその旨誤信させて、次々と無価値の土地を購入させた。

4  被告らの責任

(一) 被告会社は、原告に対し、組織的に前記3のとおりの違法な本件各土地の売買の勧誘をし、売買契約を締結させ、売買代金名下に金員を交付させて、原告に損害を被らせたものであるから、民法七〇九条により、原告に生じた損害を賠償する責任を負う。

(二) 被告平田は、被告会社の代表取締役として、被告会社の組織的な違法行為を指揮監督したものであるから、民法七〇九条により、右行為によって原告に生じた損害を賠償する責任を負う。

5  原告が被告らの右不法行為によって被った損害は次のとおり三二一万四四〇〇円である。

(一) 原告の支払金額 二六七万四四〇〇円

原告は、被告会社に対し、前記2の(一)ないし(五)のとおり、本件各土地の売買代金及び登記費用として合計二六七万四四〇〇円を支払い、右金額相当の損害を被った。

(二) 慰藉料 二七万円

原告は、本件各土地の売買取引により、人間不信、自責の念、周囲への配慮に苦悶し、右精神的苦痛を慰藉するには二七万円が相当である。

(三) 弁護士費用 二七万円

6  よって、原告は、被告ら各自に対し、不法行為に基づく損害賠償として、金三二一万四四〇〇円及びこれに対する不法行為後である被告会社については昭和六一年一一月一八日(本件訴状送達の日の翌日)から、被告平田については同年一二月一七日(本件訴状送達の日の翌日)から各支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の(一)ないし(五)の事実は認める。

3  同3の(一)ないし(三)の事実及び主張は争う。

4  同4の(一)、(二)の事実及び主張は争う。

5  同5の事実は否認する。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1、2の事実は当事者間に争いがなく、右事実及び《証拠省略》を総合すると、次の事実が認められる。

1  原告は、昭和三七年七月六日生れで、昭和五八年四月、専門学校卒業後、航空会社に勤務して輸入通関の事務に従事し、昭和五九年八月当時、月収一一万円を得ており、預金が二〇〇万円位あったが、不動産取引や利殖目的の投機的取引の知識経験は全くなかったものである。原告は、同月下旬ころ、被告会社従業員の新地、磯山の訪問を受けた。右両名は、原告に対し、利殖目的で青森の土地を購入してほしい旨申し入れ、日本経済新聞のコピーや現地の地図を示して、「一、二年後には付近に新幹線が開通する。政府の援助によりむつ小川原開発が進められており、うちの会社も政府と関係があるから必ず値上りする。現在坪当り二万五〇〇〇円位だが、一年後には、坪当り三万円位になる。銀行よりも有利な利殖であり、株や金よりも安全である。転売も被告会社で責任をもってする。」などと言って、右土地購入の有利さや安全性を強調するとともに、「早く契約しないとなくなってしまう。」などと早期の契約を迫って、土地(一)を購入するよう勧誘したので、原告は、右従業員らの言を信じて、これを購入することとし、同日、被告会社との間で、原告が被告会社から土地(一)を代金六〇万円で買受ける旨の売買契約を締結し、被告会社に対し、同日、内金一二万六〇〇〇円、同年九月二日、残金四七万四〇〇〇円、合計六〇万円を支払い、同月七日、被告会社から土地(一)につき所有権移転登記を受けた。

2  原告は、昭和六〇年八月二一日、原告宅に来た被告会社従業員の上田から、土地(一)だけでは面積が小さくて売却しにくいし、そのまま売却すると対税上不利なので、新たに、別の物件を買増してもらいたいとの勧誘を受けたので、原告は、右説明を信じて、被告会社から土地(二)を購入することとし、同日、被告会社との間で、原告が被告会社から土地(二)を代金六二万五〇〇〇円で買受ける旨の売買契約を締結し、被告会社に対し、同日、内金一二万五〇〇〇円、同月二二日、内金二三万円、同月二九日、残金三〇万円、合計六五万五〇〇〇円(内三万円は登記費用として)を支払い、同年九月一一日、被告会社から土地(二)につき所有権移転登記を受けた。

3  原告は、同年一一月四日、被告会社従業員の訪問を受けた。右従業員は、原告に対し、「新幹線が開通するとの話はなくなったので、原告がこれまで取得した土地を早急に売却しなければならないが、転売に先立って、新たな土地を購入すれば、転売利益に課される税金が安くなる。税金対策をしなければ、前の土地も売れない。」などと言って、土地(三)を購入するよう勧誘したので、原告は、右説明を信じて、やむをえず、被告会社からこれを購入することとし、同日、被告会社との間で、原告が被告会社から土地(三)を代金四五万円で買受ける旨の売買契約を締結し、被告会社に対し、同月五日、内金二四万円、同月八日、内金六万円、同年一二月一六日、内金九万九四〇〇円、合計三九万九四〇〇円(内五万円は登記費用として)を支払い、同年一一月二〇日、被告会社から土地(三)につき所有権移転登記を受けた。

4  原告は、昭和六一年一月一六日、原告宅に来た磯山から、原告が取得した土地の転売時期が来ているが、対税上、さらに、新たな土地を取得しなければ、転売できない旨言われ、土地(四)を購入するよう勧誘されたので、右説明を信じて、自己資金も底をつきかけていたが、早期に転売したい一心で、やむなく被告会社から土地(四)を購入することとし、同日、被告会社との間で、原告が被告会社から土地(四)を代金四〇万円で買受ける旨の売買契約を締結し、被告会社に対し、同月二一日、内金一一万円、同月三〇日、残金三一万円、合計四二万円(内二万円は登記費用として)を支払い、同月二八日、被告会社から土地(四)につき所有権移転登記を受けた。

5  原告は、同年六月六日、新地の訪問を受け、同人から、税金対策として、さらに新たな土地を購入してもらいたいとの勧誘を受け、また金融機関から借入れしてでも購入するよう強く勧められたので、自己資金はほとんどなかったが、右勧めに応じて被告会社から土地(五)を購入することとし、同日、被告会社との間で、原告が被告会社から土地(五)を代金六〇万円で買受ける旨の売買契約を締結し、同日、内金五〇〇〇円、同年七月一〇日、残金五九万五〇〇〇円、合計六〇万円を支払い、同月二八日、被告会社から土地(五)につき所有権移転登記を受けた。原告は、右支払額六〇万円のほとんどを銀行や両親、友人から借入れて調達した。

6  土地(一)、(三)、(五)が所在する青森県上北郡横浜町は、人口が昭和六二年三月一日現在六五七七人で、若年層の社会減に伴い、毎年、過疎化が進んでいる。土地(三)は、雑草等が生い茂っている状態で、整地もなされていない。同町の山林、原野の価格は、昭和六二年当時一平方メートル当り三〇〇円未満である。

7  土地(二)、(四)が所在する青森県上北郡野辺地町は、人口が約一万八〇〇〇人で、ここ数年は、横ばい状態である。被告会社が同町において販売している土地は、道路がなく、木が生い茂ったままの踏み込むことが極めて困難な状態の土地で、かつ、袋地でもあり、同土地に居住することは不可能である。昭和六二年における右土地の価格は、一〇〇〇平方メートル当り一〇万円から二〇万円程度である。

8  政府は、昭和四四年、第三次全国総合開発計画の一環として、青森県の陸奥湾と小川原湖を結ぶ広大な未利用地域(以下「むつ小川原地域」という。)に、石油精製設備、石油化学プラント、火力発電所からなる一大石油コンビナートを建設する計画(以下「むつ小川原開発計画」という。)を打出し、右計画実施のため、昭和四六年、むつ小川原開発公社(以下「開発公社」という。)が設立され、開発公社は、開業予定地域に四一七万平方メートルの土地を買収し、工場用地として、二八〇万平方メートルを確保したが、二度にわたるオイルショックにより、右計画は頓挫し、開発公社の取得した土地は引受先のないまま放置された。そこで、昭和五四年、むつ小川原地域に国家石油備蓄基地を建設する計画がなされ、右基地建設用地として、開発公社の保有土地が提供されたが、右提供にかかる土地は、、二六〇ヘクタールのみである。また、むつ小川原地域に、原子力発電用のウランの濃縮から使用済核燃料の再処理までを一貫して行う施設の建設の計画が進められ、昭和六一年八月、事業主体である日本原燃サービス、日本原燃産業が、開発公社から事業用地として七二三ヘクタールの土地を取得したが、開発公社は広大な未処分土地を抱えており、右事業の計画の用地供給に困ることはない。なお、仮に、むつ小川原開発計画が、すべて順調に実現されたとしても、増加人口は、三万人位で、立地企業従業員らの住宅用地は、すでに確保されており、開発公社が前記のとおり広大な未処分土地を抱えていることからみても、被告会社が取得している土地が右計画に利用されるとか、右土地が宅地化する見込はない。

9  むつ小川原開発計画が発表された昭和四四、四五年ころ以降、大手の不動産業者は、むつ小川原地域において、広大な土地を買収したが、その後、二度にわたるオイルショックによって右計画は頓挫して、買収した土地は、ほとんど売れ残っていた。被告会社は、主として、こうした土地や地元の地主の土地を地元の不動産業者を通じて仕入れ(地元不動産業者は、地元の地主から買収する際には、一〇〇〇平方メートル当り二五万円から三〇万円で仕入れ、これに五万円程度上乗せした価格で被告会社に転売した。)、これを国土利用計画法の規制を免れる一万平方メートル以下に一旦分筆し、これをさらに細分して、関西地方を中心として、末端の購入者に販売していた。なお、被告会社は、提携関係にある三陽商事とともに、六ヶ所村と横浜町に出張所を設けて、地元から雇入れた者を常駐させて、土地の仕入に当らせていた。被告会社が販売していた右土地は、宅地需要が見込めないため宅地の価格評価は不能であり、仮に、宅地として利用するとしても、周辺地域は酪農地帯であり、農地と同様な価値しかなく、実際の取引価格は、一平方メートル当り二〇〇円から五〇〇円程度である。原告が、被告会社から購入した本件各土地もこうした土地の一部である。

以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

二  前記一で認定した事実によれば、原告が被告会社から購入した土地の実勢の市場価格は、一平方メートル当り二〇〇円からせいぜい五〇〇円ときわめて低く、しかも、将来において、右の価格を上昇させるような社会的、経済的要因は存在せず、値上りのまったく見込めない土地であること、それにもかかわらず、被告会社の従業員は、本件各土地の実勢の市場価格を秘して、同土地がこれを著しく上回る価値のある土地であって、周辺地域の開発計画や新幹線の敷設などにより近い将来の値上がりが確実であるかのように言葉巧みに説明して、若年で不動産取引や利殖目的の投機的取引の経験がまったくない原告に右説明を信じさせて、一平方メートル当り七二二八円と実勢の市場価格を著しく上回る価格で土地(一)を購入させたうえ、さらに、その後、転売するためには対税上土地を買増す必要があるかのような虚偽の説明をして、転売を焦る原告に、四度にわたり、一回目同様実勢の市場価格を著しく上回る価格(一平方メートル当り、土地(二)につき七六二一円、土地(三)につき五四八七円、土地(四)につき四八七八円、土地(五)につき七五九四円)で土地(二)ないし土地(五)を購入させたことが認められ、また、前記認定の被告会社の従業員の巧みでかつ緊密な連携を窺わせる勧誘方法、被告会社の仕入方法に弁論の全趣旨を総合すると、被告会社の従業員らは、いずれも、本件土地に関する前記認定の事実関係を十分知りながら、原告に対する勧誘に臨んだことが推認できるというべきである。

《証拠省略》によれば、昭和五九年三月、昭和六〇年一〇月、昭和六一年九月実施にかかる大阪弁護士会所属の弁護士を対象とした担当事件についてのアンケート調査結果によると、一般の主婦や会社員などが、被告会社従業員から、青森県上北郡の土地について、「むつ小川原開発計画が進んでおり、必ず値上りする。」などと言われて、購入の勧誘を受け、これを購入し、一件につき一〇〇万円から三〇〇万円前後の被害を受けており、被害件数も、昭和六一年九月実施のアンケート調査では、一二件にも及んでいること、大阪弁護士会所属の弁護士による悪徳土地取引研究会が、昭和六一年一一月二七日及び同月二八日に、電話による土地取引被害の相談を受付けたところ、被告会社による被害の相談が一〇件あったこと、また、同年四月から同年一一月までの間の同研究会への電話問合せのうち、被告会社による被害の相談が四二件に及んだこと、さらに、大阪弁護士会消費者被害救済センターに、昭和六〇年六月一日から昭和六一年九月三〇日までの間に寄せられた被告会社による被害の苦情、相談が一八件、昭和六一年度に大阪府下消費生活センター及び行政窓口に寄せられた被告会社による被害の苦情、相談が一六件あったことが認められ、右事実に前記認定の被告会社の従業員の詐欺的勧誘方法、被告会社の土地の仕入状況等を総合すると、被告会社は、各従業員の緊密な連携のもとに、組織的かつ計画的に詐欺的手段を用いて原告を本件各土地についての取引に勧誘し、原告から売買代金名下に、金員を交付させて取得したことが認められる。

以上の事実関係によれば、被告会社が従業員を通じてした前記の売買取引行為は、原告に対する不法行為に当り、被告会社は、民法七〇九条により、原告に対し、右行為によって原告に生じた損害を賠償すべき責任がある。

三  被告平田が被告会社の代表取締役であることは当事者間に争いがなく、右事実に前記一、二の事実並びに弁論の全趣旨を総合すれば、被告平田は、被告会社の代表取締役として、被告会社が原告に対する前記の違法行為を、その営業活動として組織的に行うことを知りながら、これを計画、立案し、その遂行を総括していたものと認められ、被告平田の右行為も、原告に対する不法行為に当るというべきであるから、被告平田は、民法七〇九条により、原告に対し、右行為によって原告に生じた損害を賠償すべき責任がある。

四  損害について

1  前記一の事実によれば、原告は、本件各土地の売買代金及び登記費用等として合計二六七万四四〇〇円を支払ったことが認められ、右は被告らの前記各不法行為による損害と認めるのが相当である。

2  前記一で認定した被告会社の原告に対する本件各土地の売買の勧誘の態様、売買取引期間、売買取引回数、被害金額等諸般の事情を勘案すれば、原告は、被告らの前記各不法行為によって多大の精神的苦痛を被ったもので、その精神的損害に対する慰藉料は二七万円を下らないものと認めるのが相当である。

3  原告が本件訴訟の追行を弁護士である原告訴訟代理人らに委任したことは本件記録上明らかであり、本件事案の性質、審理の経過及び認容額に照らすと、被告らが各自原告に対して賠償すべき弁護士費用は二七万円とするのが相当である。

五  したがって、原告は、被告ら各自に対し、不法行為に基づく損害賠償として、三二一万四四〇〇円及びこれに対する不法行為後である被告会社については昭和六一年一一月一八日から、被告平田については同年一二月一七日から各支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めうるものというべきである。

よって、原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条一項本文、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山本矩夫 裁判官 佐々木洋一 植屋伸一)

<以下省略>

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